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医療法人承継の基礎

公開日/2021年9月29日

医療法人承継の基礎記事入り画像虫眼鏡と病院をイメージした切り絵

事業の跡継ぎ問題は、
医療業界でも深刻に考えなければならない時代になりました。
もしもの時に慌てないため、早めに対策をたてたいですね。

1 増えてきた医業承継とその課題

私たちのグループには医業専門のコンサルティングチーム(株式会社メディウェル経営パートナーズ)があります。

ここでは医院の開業から医業の承継まで幅広い相談をお受けしています。
ここ数年で多くなってきているのが「医業承継の相談」です。
 
開業医の先生方で、後継者について悩んでいる方が数多くいらっしゃいます。

・子どもが医学部に進学せず、他の道に進んでしまい、跡継ぎとして考えることをあきらめた。
・子どもが医学部に入ったけれど、関心がある診療科目が親とは違う。
・子どもが医学部で知り合った同級生と結婚したが、結婚した相手の親の病院で働くことになってしまった。
・子どもがいない。勤務医も採用してみたが、医業経営には向いていない。
・医業経営の赤字が膨らんでいて、子どもに継いでくれと言えない。
・子どもが医学部に入る直前に、医院を経営する先生が亡くなってしまった。

医院を経営する先生は、地域医療の継続の責任だけでなく、ご自身や家族の老後の生活設計、
万が一、自分が働けなくなった後のことなどの「医業の承継問題」を避けては通れないのです。
 
今回は、医療法人の承継方法の中で、最近増えている「M&A」についてお伝えします。

2 「M&A」は医療法人の承継方法

①廃業することのデメリット

医院の後継者が見つからない場合は、廃業をしなければなりません。
廃業する場合には、承継する場合に比べて次のようなデメリットがあります。

・医院に来てくれる患者さん、その患者さんをわかっているスタッフなどの経営資源が失われてしまう。
⇒M&Aなら、これまでの経営資源の価値を評価してもらえる可能性がある。
 
・医療用の機械設備、計器、備品が不要になるので、売却しても処分価格として低く評価されるだけでなく、売却できないものは、ほとんどが廃棄処分になるので、高額な処分料がかかってしまう。
⇒M&Aなら使用している機械設備や什器備品は原則として廃棄処分する必要はない。
 
・医院の建物を個人または法人で所有している場合、医業用に使っていた建物部分は転用が難しいので、高額なリフォームや取壊し費用が発生してしまう。
⇒M&Aであれば引き続き医院として利用してもらえる可能性があるので、リフォームや取壊し費用は発生しない。

M&Aを使うと、医業の主体(医院の経営者)は変わっても、医院は継続していくので地域の医療が守られていく可能性は高くなります。
 
医療法人は財団形式と社団形式の二つの法人に分類され、多くの開業医は社団形式の医療法人となっています。
また、その社団形式の医療法人は、「出資持分ありの法人」と「出資持分なしの法人」(平成19年4月の医療法改正以後に設立された医療法人)の二種類があります。
現在は、まだ多くが「出資持分ありの医療法人」です

②「持分ありの医療法人」のM&Aの場合

まず、「持分ありの医療法人」のM&Aについて概略を説明します。
 
「持分ありの医療法人」では、開業から医療法人の中に財産が蓄積されていきます。
 
例えば、設立時には設立者が1000万円を出資して、出資金1000万円(=預金1000万円)だったのが、
長年の医院経営により、1憶円の財産が築かれました。
 
「持分ありの医療法人」の出資金(財産)は、設立者である院長先生個人がほとんどを持っていることが多いので、医療法人をM&Aで売却する時には、出資金の価値で売却することができます。
そうすることで医院(医療法人)を丸ごと売却することができます。
この場合の売却価格は出資金額ではなく、出資金を改めて評価して価格を決めることになります。
医院の財産、稼働中の機械設備、患者さん、スタッフなど経営資源があるわけですから、それらを評価して売却価格を決めるのです。
なお、譲渡時に院長先生は退職金を医療法人から取ることも可能です。
 
M&Aで売却できずに廃業する場合には、医療法人の借金があれば返済し、不動産や医療機器を売却あるいは廃棄処分して、スタッフの退職金を支払い、院長先生の退職金を支払い、残ったお金があれば、出資持分の払い戻しになります。
出資者が複数いれば、その持ち分割合で払い戻しが行われることになります。
出資払い戻しが受けられるのは、退職時か医療法人の解散時になります。
また、払い戻しを受けずに出資者が死亡した場合には、その出資持分は相続人に相続されます。

③「持分なしの医療法人」のM&Aの場合

「持分なしの医療法人」では、院長が出資持ち分を持っていないため、持分ありの医療法人のように、出資持ち分を売却したり、払い戻しを受けたりすることができません。
退職金でしか医療法人に蓄積された財産をもらう方法がないのです。
解散時に財産が残っていたとしても国庫に入るのが基本です。
ただし、「基金拠出型法人」であれば、拠出した金額を上限に返還を受けられます。
 
上記のように書くと、「持分なしの医療法人」は、損ばかりのような説明になってしまいますが、
「持分ありの医療法人」では、退職や相続により出資持ち分の払い戻しを受けて経営が苦しくなったり、医療法人に蓄積された財産が相続税の対象とされるためその対策に頭を悩ませたりすることもあるのです。
そのため、「持分ありの医療法人」でも、厚生労働省へ移行計画を申請し認定を受ければ「持分なしの医療法人」へ移行もできます。
 
「持分なしの医療法人」のM&Aは一般的に合併をすることによって行なわれます。
ただし、法律上合併ができるのは、医療法人同士に限定されていて、財団は財団同士、社団は社団同士でなければ合併はできません。
 
合併には、合併後に存続する法人に、消滅する側の法人のすべてを引き継がせる「吸収合併」と、新しく医療法人を設立し、消滅する二つ以上の医療法人のすべてを引き継がせる「新設合併」があります。

3 まとめ

医業承継には、今回説明した他にも個人医院で使われている「事業譲渡」の形で行うものもあります。
いずれにせよ、院長先生とご家族の老後の生活設計からスタートして、最も手取りが多い方法を節税と絡めて検討していく必要があります。
 
医業承継は、医業経営と相続に強いソレイユ相続相談室にご相談ください。
 
ソレイユ相続相談室は、医業専門コンサルタントのメディウェル経営パートナーズと相続専門税理士法人と相続専門行政書士法人が運営しています。

この記事の監修者

宮澤 博

宮澤 博 (税理士・行政書士)

税理士法人共同会計社 代表社員税理士
行政書士法人リーガルイースト 代表社員行政書士

長野県出身。お客様のご相談に乗って36年余り。法人や個人を問わず、ご相談には親身に寄り添い、お客様の人生の将来を見据えた最適な解決策をご提案してきました。長年積み重ねてきた経験とノウハウを活かした手法は、他に類例のないものと他士業からも一目置くほど。皆様が安心して暮らせるようお役に立ちます。